そもそも金利とは何か?
金利には「お金を守る」役割がある
「金利が上がる」
そう聞くと、どんなことを思い浮かべるでしょうか。
住宅ローンの返済が増える。
企業がお金を借りにくくなる。
なんとなく景気に悪そう。
金利が上がることに、あまり良いイメージを持っていない人も多いかもしれません。
確かに、住宅ローンを借りている人にとって、金利上昇は負担になる可能性があります。
では、金利は低ければ低いほどいいのでしょうか。
もしそうなら、ずっと金利を0%近くにしておけばよさそうです。
でも、そう単純ではありません。
なぜなら金利には、借りる人が利息を支払うという側面だけでなく、
私たちのお金の価値を守る機能もあるからです。
その意味を理解するために、まず「100万円」を例に考えてみましょう。
100万円は、1年後も同じ100万円なのか
今、100万円を持っているとします。
そして、この100万円で買える商品があったとします。
ところが、その後1年間で物価が5%上がりました。
去年100万円だった商品は、単純化すると105万円になります。
一方、手元には100万円しかありません。
通帳に書かれている数字は「100万円」のままです。
100万円が90万円に減ったわけではありません。
それなのに、去年買えたものが買えなくなっています。
これは、
100万円という金額は変わっていなくても、その100万円で買えるものが減った
ということです。
つまり、物価が上がるということは、反対側から見ると、
お金の購買力が下がること
でもあります。
物価が5%上がるなら、お金も増えなければ価値を保てない
では、この100万円に年間5%の金利がついたらどうでしょうか。
100万円は1年後、105万円になります。
一方、100万円だった商品も、物価が5%上がって105万円になっています。
去年は、
100万円のお金で、100万円の商品が買えた。
1年後は、
105万円のお金で、105万円の商品が買える。
お金の金額は増えていますが、買えるものはほぼ変わっていません。
つまり、物価が5%上がる世界では、お金も5%程度増えなければ、購買力を維持できないということです。
反対に、物価が5%上がっているのに、金利が1%しかなかったらどうでしょう。
100万円は101万円になります。
しかし、商品は105万円です。
お金は増えているのに、買えるものは減っています。
ここが、金利を考えるうえでとても重要なところです。
金利が何%なのかだけを見ても、お金が本当に増えたのかは分かりません。
物価と比べて考える必要があります。
そこで出てくるのが、実質金利という考え方です。
簡単に考えるなら、
金利 − 物価上昇率
です。
金利3%、物価上昇率3%なら、実質的にはおおむね0%。
金利1%、物価上昇率5%なら、実質的にはマイナスです。
厳密な計算は少し違いますが、家計で考えるなら、まずはこのイメージで十分です。
大切なのは、
お金が何%増えたのかではなく、物価上昇を考えても購買力を維持できているのか
という視点です。
金利には、お金の価値を守る機能がある
こう考えると、金利の見え方が少し変わってきます。
金利は、住宅ローンを借りた人が銀行に支払うだけのものではありません。
お金を貸した人は、今使えるお金を一定期間、相手に渡しています。
その間に物価が上がれば、返ってきたお金の購買力は下がってしまいます。
だからこそ、そこには利息があります。
もちろん、実際の金利は物価だけで決まるものではありません。
借り手の信用力、貸し倒れのリスク、期間、市場での資金需要など、さまざまな要因が関係します。
それでも、
時間の経過や物価上昇によって失われるお金の価値を補う
という考え方は、金利を理解するうえで大切です。
では、金利は高いほどいいのか
ここまで読むと、
「それなら金利は高い方がいいのでは?」
と思うかもしれません。
しかし、そうでもありません。
預金をする側から見れば、高い金利はうれしいものです。
一方、お金を借りる側から見れば、金利は負担になります。
たとえば住宅ローンです。
金利が上がれば、同じ金額を借りても利息負担は大きくなります。
企業も同じです。
企業は工場を建てたり、機械を購入したり、新しい事業を始めたりするために、お金を借ります。
金利が高くなれば、
「この投資をして利益を出せるだろうか」
と、慎重になります。
つまり、金利が上がると、家計や企業はお金を借りたり使ったりすることに慎重になります。
金利には、物価の上がりすぎを抑える機能もある
ここでもう一度、物価の話に戻ります。
景気がよく、家計も企業も積極的にお金を使っているとします。
商品を欲しい人が増える。
企業は設備投資をする。
人手も必要になる。
賃金も上がる。
こうした動きが強くなりすぎると、経済全体の需要が増え、物価を押し上げることがあります。
そこで金利が上がるとどうなるでしょうか。
住宅ローンの負担が大きくなる。
企業の借入負担も大きくなる。
一方で、預金などで受け取れる利息は増えやすくなる。
すると、
「今すぐ借りて使おう」
という動きが弱くなり、
「少し貯めておこう」
という動きが強くなります。
経済全体でお金を使う勢いが落ち着けば、物価を押し上げる力も弱くなります。
つまり金利には、
物価が上がりすぎたときに、経済の勢いを少し抑える機能
もあるのです。
「金利が上がる=悪いこと」ではない
ニュースで「利上げ」と聞くと、どうしても悪いニュースのように感じます。
住宅ローンを借りている人にとっては、実際に負担が増える可能性があります。
企業にとっても、借入金利の上昇はコストです。
だから、金利上昇の影響を軽く考えていいわけではありません。
ただ、もう一つ考えてみたいことがあります。
もし物価が上がり続けているのに、金利がずっと低いままだったらどうなるでしょうか。
お金を借りやすい状態が続きます。
家計や企業がお金を使う勢いが強いままであれば、それがさらに物価を押し上げる可能性もあります。
住宅ローンの金利は低くても、
食料品が上がる。
電気代が上がる。
日用品が上がる。
サービス価格が上がる。
そして、貯めてきた100万円で買えるものが減っていく。
家計は別の形で負担を受けることになります。
だから、
「金利が上がったら困る」だけではなく、「金利を上げなかったらどうなるのか」
まで考える必要があります。
反対に、金利を下げることもある
もちろん、物価が上がりすぎることだけが問題ではありません。
景気が悪くなり、企業も家計もお金を使わなくなることがあります。
商品が売れない。
企業の利益が減る。
企業が投資をしない。
給料も増えない。
さらに家計がお金を使わなくなる。
こうした状況では、金利を下げることで、家計や企業がお金を借りやすい環境をつくります。
住宅を買う。
企業が設備投資をする。
新しい事業を始める。
そうした経済活動を後押しします。
つまり金利には、
経済が動きすぎれば抑え、動かなければ後押しする
という調整機能があります。
金利が動けば、住宅ローン以外にも影響する
ここまで分かると、ニュースで金利が注目される理由も見えてきます。
金利が動けば、住宅ローンが変わります。
預金金利も変わります。
企業がお金を借りる負担も変わります。
企業の投資判断が変われば、景気や雇用、給料にも影響する可能性があります。
さらに、金利は株式にも影響します。
そして、日本と海外の金利の差が変われば、円を持つか、ドルなどの海外通貨を持つかという投資家の判断にも影響するため、為替にもつながっていきます。
つまり、
住宅ローン、預金、企業、株価、為替。
一見バラバラに見えるものが、金利を通じてつながっています。
金利を見るときに大切なのは「何を守ろうとしているのか」
金利について考えるとき、
「上がるのか、下がるのか」
だけに目が向きがちです。
でも、本当に大切なのは、
なぜ金利が動いているのか
を考えることです。
物価が上がっているのか。
景気が強いのか。
企業や家計がお金を使っているのか。
それとも、経済が弱くなっているのか。
その背景まで見ると、金利のニュースはずっと理解しやすくなります。
金利は、住宅ローンを苦しくするためにあるものではありません。
預金を増やすためだけにあるものでもありません。
金利には、
時間や物価上昇によって失われるお金の価値を補う機能があります。
そして経済全体では、
お金が使われる勢いを調整し、物価が一方向に動きすぎるのを抑える機能があります。
その先にあるのは、
私たちが持っているお金で、将来も安心してモノやサービスを買える環境を保つことです。
だから、金利が上がったというニュースを見たときに、
「住宅ローンが上がる」
だけで終わらせない。
「なぜ今、金利を動かす必要があるのだろう?」
と考えてみる。
それが、金利を理解する最初の一歩だと思います。
では、日銀による利上げがどこまで上がるのか?
次の記事で考えてみたいと思いまくる。